◆◇◆とっても「ウナギ」な話◆◇◆

ウ〜ン、日本全国夏ですね。北海道ではきっとさわやかな夏の到来ですね。まるでウナギのように細長い日本列島には、さまざまな夏が訪れていることと思います。今回はそんな日本の夏に贈る、とっても「ウナギ」な話です。エッ、ウナギが嫌い?あの姿を見ただけでイヤ!あの蒲焼きの匂いがイヤ!いるんですよね、そういう人って以外にたくさん。実は私も以前はそうでした。そういう人も我慢して今日は最後まで読んでみてください。もしかしたら、ウナギに対する見方が変わるかも知れませんよ。「だまされたと思って(決してだましたりしません!)一度食べてみようかな。」そう思えるかも知れませんよ。

まずは軽〜く、江戸時代の小咄(こばなし)一つ
町中の繁盛しているウナギ屋の店先で、主人がいつものように炭火を団扇であおぎながらウナギを焼いていました。ふと顔を上げてみると、その匂いに引き付けられたたくさんの町民が店先を取り囲んでいるではありませんか。がめつい主人は思わず言いました。「匂いの嗅ぎ賃を払え!」それを聞いた町民たちは、ムッとして懐(ふところ)から小銭を取り出し、いっせいにカチカチと音だけを聞かせたとか-------。匂ってきませんか?あの匂いが。

とっても「フシギ」な「ウナギ」の生い立ち
私たちが普段食べているお魚も最近では随分養殖物が増えてきました。天然物がほとんど流通していないウナギももちろん養殖です。養殖は普通、卵から「当然」するのですが、ウナギの場合は違います。シラスウナギと呼ばれる幼魚が河口に近づいた時に捕獲して、これを養殖するのです。何故かというと、天然のウナギが産卵するところを未だに誰も見たことがないのです!

ウナギがどこで卵を産んで、どこを旅して河口に近づき、河川をさかのぼって湖などで過ごした後、成魚となって産卵するために再びどこへ帰っていくのか?その生態はいまだに解明されていません。「海洋生物学最後のナゾ」と言われています。けれども、最近になってようやく「産卵場所」だけはわかってきました。ニホンウナギの故郷は、マリアナ諸島の西方海域であるらしい。また、ヨーロッパ、アメリカウナギの故郷は北大西洋西部のサルガッソー海だそうです。

「ウナギの神秘」を知りたくもあり、そのままそっとして置いてあげたい気もしますね。でも、生態を解明しないとシラスウナギが減り続けているので、将来ウナギを食べられなくなる日が来るかも!?いや、それは困る!

店頭に並んでいるウナギは?
今がウナギの最盛期。どこの小売店でもウナギが幅を利かせて並べられていますし、ウナギ屋さんも盛況ですね。日本では何と年間13万トンも消費されているそうです。そして、その7割以上が輸入物です。主な輸入先はお隣の中国で、全輸入量の85%以上を占めています。中国でも原料のシラスウナギが減少しているため、ヨーロッパからシラスを輸入して日本向けに加工しています。ですから私たちは知らないうちに太平洋のニホンウナギと大西洋のヨーロッパウナギを食べているんですね。

ところで何で「ウナギ」っていう名前が付いたのでしょう?
ウナギの名前の由来としては二つの説が伝わっています。どちらもその姿からきているのですが、一つは胸びれのあたりが黄色いことから、胸黄−ムナギ−ウナギとなったという説。二つ目は姿形が棟木のようだからとする説です。ちなみに棟木とは「ムナギ」と読みます。屋根のてっぺんに横に渡してある材木です。

ウナギの調理の話
ウナギの調理については、昔から「割(さ)き三年、串打ち三年、焼き一生」と言われているほど難しいものです。それはウナギの持つ旨味成分を逃さないためには、調理にスピードが要求されることも大きな理由の一つです。あのヌルヌル、ニョロニョロの体をつかまえるだけでも大変ですよね。ところで、ウナギの割き方と調理方法には東西の違いがあります。関西では腹開きにして、素焼きしてからタレを付けて焼きます。関東では背開きにして、素焼きの後、蒸してからタレを付けて焼きます。この違いが何故できたのかは解りませんが割き方については、江戸時代に関東では「切腹」を嫌って、背開きにしたという説が伝わっています。

ウナギパワーと土用の丑の日
ウナギといえば「夏のスタミナ源、栄養満点」というイメージが定着していますがこれはいつからの事なのでしょう?本来、天然のウナギが脂が乗って美味しくなるのは、秋から初冬にかけてだそうです。ところが江戸時代の商魂たくましいウナギ屋さんのPR活動が功を奏して、ウナギと言えば夏、それも土用の丑の日が定着したといいます。その仕掛け人は次の三人が有力視されています。

▽まず一人目「平賀源内説」 あるウナギ屋に夏場にウナギが売れるようにしたいと相談された源内が、夏バテ防止に効用ありとして、うなぎ屋の店頭に「本日土用の丑の日」と大書してはり出したのが当たったという説。

▽二人目「狂歌師蜀山人(しょくさんじん)」説 あるうなぎ屋が商売がしだいに不振になっていくのを何とかしようと思い、蜀山人に対策を相談しにいったところ、土用の丑の日にウナギを食べれば病気にならないといった意味の狂歌をつくって与え、それが大きな宣伝になったという説。

▽そして三人目「春木善兵衛」説 江戸神田の春木善兵衛というウナギ屋が注文を受けた大量のかば焼きを3日間にわたって焼き貯蔵しておいたところ、丑の日に焼いたウナギが味が落ちなかったので、土用の丑の日にウナギを食べることをすすめたという説。

何だかどれも本当っぽいですね。でも少なくとも現在では、ほとんどが養殖物な訳ですし、栄養満点なのも確かですから「モリモリ食べて夏バテ知らず」といきたいものですね。


■メールマガジン<お魚よもやま情報>2000年7月号