◆◇◆忠猫タチ公?の話!◆◇◆

忠猫タチ公!?
昔々の小噺ひとつ。ある夜、物音に気付いて目を覚ますと、人影が・・・・目を凝らすと銀色に輝く抜き身を携えています。「金を出せ!」強盗の声に主人は震え上がりました。するとその時、何と飼い猫が握られた刀に飛びついたではありませんか!危ない、切られる!思わず目を閉じました。そして目を開けると、すでに強盗はいません。ネコはと見ると、うずくまって刀をうまそうに食っているではありませんか!?側に寄ってよくよく見ると、刀と見えたのは実は太刀魚(タチウオ)だったのです!!     おしまい。

太刀魚ってこんな魚です
結構ポピュラーなお魚なので、きっとファンも多いでしょうね。でも顔を思い浮かべることのできる人は案外少ないかも知れません。何しろ細長いですから店頭では、切り身かお刺身に調理されていて、めったに姿は見かけられないと思います。

体の表面はメタリックな銀色。背びれだけが頭の後ろから尾まで続き、胸びれも腹びれも尻びれもない、リボン状の長い体は大きいものだと1.5mにもなります。一般的な魚の「標準規格」には合わない体形をしています。それでも、バランスのとれた綺麗な姿ですよね。あの体形と金属的に輝く銀色の体表が素晴らしくマッチしているからなのでしょう。

タチウオという名も、もちろんこの刀をイメージさせる姿から来ています。また、一説には、立ち泳ぎする姿から来ているとも言われます。

大きな目・・・
太刀魚の目はいわゆるギョロ目です。何故これほど目が大きくなったのか。またこのような姿になったかと言うと、もともとは近縁種のムツのように標準規格の姿だったのが、遠い過去に深海の暗い海底生活に移ったためではないかと考えられています。海底の環境に順応した結果、目が大きくなり、体も銀色の細長いものに変わり、体をくねらせて泳ぐようになって、背びれだけが発達して他のひれが退化したという訳です。

そして、いつしかこの姿のまま、再び標準規格魚の生活場所に戻ってきたものの、完全には戻り切れていないのだろうといわれています。

鋭い歯・・・
太刀魚は口が大きく、下あごが突き出していて、犬歯の先端は返しの付いた鋭い剃刀状になっています。見るからにどう猛そうな顔つきです。姿のままの太刀魚を調理する際には、歯には十分注意して下さい。ところが、太刀魚の釣りエサには、イカやタコ、魚でもベラのような柔らかいものを好むそうです???

銀箔<タチ箔>
太刀魚の見事な銀箔は、こするとすぐに落ちてしまいます。これはグアニンという高分子化合物の結晶で、セルロイドと練り合わせて人工真珠や銀箔紙やアイシャドー等化粧品の原料として利用されています。

立ち泳ぎ、逆立ち泳ぎ
世界の暖海域に広く分布していますが、日本では特に本州以南の水深150m位までの泥底が主なすみかです。また、日本近海では、中国大陸沿岸域が豊富です。稚魚や幼魚は日中には中層で群れを作り、夜間には表層でオキアミや他の魚の稚魚を食べます。成魚になると日中に中層から表層でカタクチイワシ類等のエサを食べ、夜には底層に戻るという逆のサイクルになります。
タチ泳ぎするのは、急いで移動する必要のない時や頭上のエサを待ち伏せするときです。ちなみに、孵化した子どもは逆立ち泳ぎをするそうです。

太刀魚祭り
和歌山県有田市では、たちうお漁獲高日本一をアピールするため毎年11月3日に有田川岸において太刀魚を使った料理のサービスやフリーマーケット、野外コンサート等多彩な催しを行っているそうです。昨年の当ハマの魚河岸の太刀魚入荷量は、近場の千葉、神奈川に次ぐ第3位が和歌山県でした。

太刀魚のブランド化
山口県では、山口県南東部の瀬戸内海沿岸(通称「周防瀬戸」)で、曳縄(ひきなわ)釣漁業で一匹一匹丁寧に漁獲されたタチウオを「周防瀬戸の太刀魚」の名前でブランド化しています。全国に美味しい太刀魚が届くよう頑張って下さい!

目利きのポイント
表面の銀色に光沢があって、身を押さえて硬いものは鮮度がよい証拠ですが、底びき網等で獲ったものは新鮮でもこの銀色がはがれ落ちていることが多いです。身が透き通って弾力のあるものを選んでください。

調理のコツ・・・
昔から、魚は「生で食おうか、焼いて食おうか、いっそ煮るなら捨ててしまえ」というほど、焼き魚は基本の基本だそうです。太刀魚も刺身か塩焼きがグッドですね。身が柔らかく煮くずれしやすいので、煮る場合は空揚げしてからの方がいいですよ。また、意外にもバターやオリーブ油の風味に合うことから洋風料理の素材としても人気が高いですね。

▽細造り:鮮度の良い太刀魚が手に入ったら、銀箔を取らずに三枚に下ろしてイカの糸造りのように細く切って、ポン酢で食べると最高です。

▽天ぷら:三枚おろしにして揚げるだけですが、ふっくらと柔らかくて、格別の美味さです!そういえば関東では、太刀魚の天ぷらって、あまり見かけませんよね。


■メールマガジン<お魚よもやま情報>2001年9月号