◆◇◆あじがよい魚の話◆◇◆

「味がよいからアジ」という名が付いたという話は、皆さんも聞いたことがありますよね。単純すぎてシャレにもならないと思ってしまいがちです。でもこの説を紹介したのが、かの新井白石だと聞くと、なぜか納得してしまうのは私だけでしょうか。いわく「アヂとは味なり。その味の美をいふなり」。

マアジってこんな魚です
スズキ目・アジ科の魚は世界中に140種近くもいます。でも大半は、ブリやヒラマサ、カンパチ、シマアジのように、一般的にイメージするアジとはほど遠い仲間達です。逆に、エッ、ブリがアジ科なの!?と思ってしまいますよね。分類をその下の「属」まで見ると、「マアジ属」というのがあります。これは世界で13種ほど。日本にはマアジ1種しかいません。一般的に単にアジと言えば、このマアジのことです。

姿の似ているアオアジ(マルアジ)やムロアジ、オアカムロ(オアカアジ)、クサヤモロ(クサヤムロ)などは「ムロアジ属」に分類されます。
マアジの特徴は、ゼイゴ(ゼンゴ)と呼ばれる硬いトゲのあるウロコが側線の全長にわたって付いていることです。調理するときには取り除きますが、干物には付いたままですね。噛むとバリバリ音のするアレです。

キアジとクロアジ
マアジは日本各地の沿岸と朝鮮半島、東シナ海に分布しています。その中で内湾や瀬に住み着く瀬付き(根付き)の群れと、やや沖合を回遊する群れがあります。瀬付きのマアジは、体高(背と腹の幅)が高く、体色が黄色っぽいことからキアジとも呼ばれます。当市場にはこの瀬付きのマアジが各地から入荷し、「地アジ」と総称されています。

一方、沖合を回遊するマアジは、体高が低くスマートで体色が黒っぽいのでクロアジとかノドグロとも呼ばれます。春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下します。漁獲量はクロアジの方が多いのですが、地アジの方が一般的に脂ののりがよく、味も良いので高値で取り引きされます。

ブランドアジ
日本人はブランドに弱いなどと言われますが、天然の魚を商標登録したのは世界で初めてですよね!?ご存じ<関アジ・関サバ>です。これは大分県の佐賀関半島と四国の佐多岬の間、「速吸瀬戸」で一本釣りした瀬付きのアジとサバのことです。漁協では出荷時に魚1尾ごとに、<ブランド品認定シール>を付けています!関アジの体色は特有の金色味を帯び、身は引き締まって、まさにブランド魚の風格があります。ちなみにネット販売価格は、現在700g位のものが1尾で3500円位からとか!高いか安いかは、買う人次第です。

この<関ブランド>の成功は、生産者に大きな波紋と勇気を与えました。近年、各地でブランド化の取り組みが進められています。一部を紹介します。
◎旬(トキ)アジ:日本遠洋旋網漁協(エンマキ)のブランド。五島・対馬産。
◎山口の瀬付きアジ:山口県の外海にある「アカバ瀬」他が漁場。
◎ごんあじ:五島灘の瀬付きのアジ。
◎媛っ子(ひめっこ)あじ:愛媛県八幡浜市のブランド名。
 生産者の人たちは、ブランド価値を高めるために様々な努力をしています。これらの中から第2、第3の<ブランド>が育っていくでしょう。

アジの干物
アジの干物にご飯にみそ汁、おまけに焼き海苔付き!日本人の食卓に欠かせないメニューですね。このアジに代表される干物も大きく様変わりしました。昔はもちろん天日干し。今では冷風乾燥、凍結乾燥、加熱乾燥と機械化されています。ここで一番変わったのは<日持ち>です。昔は<保存食>、今は<鮮魚>です。甘塩で水分が多いため、冷凍庫に入れておけばいつまでも大丈夫というわけにはいきません。味も確実に落ちますので、できるだけ<鮮魚感覚>で扱ってください。

干物の原料となっているマアジは輸入物も随分多いです。チリマアジ(南米からニュージーランドに分布)、ニシマアジ(別名ドーバーマアジ、オランダアジ)、ニュージーランドマアジ(別名マルアジ)、ミナミマアジ(オーストラリア周辺)などがあります。最近、例の表示義務で、これらの原産国を表示しているはずですから、この際食べ比べてみてはいかがでしょう。

マアジパワー全開!
マアジはイワシやサバとともに<青ざかな>の代表格です。青ざかなと言えば栄養豊富というイメージがすでにありますね。マアジの脂肪にも血中コレステロールを下げて血栓をできにくくするEPAや脳を活性化するDHAという<不飽和脂肪酸>がたくさん含まれています。また、カルシウムやビタミンB2も多く、からだの成長と細胞の再生を助ける働きをしています。肩こりや眼精疲労、頭痛でお悩みの方には特におすすめです。

目利きのポイント
まず、鮮度の見分け方です。全体に光沢と張りがあって、目が黒く澄み、エラが真っ赤で濁りがなく、ゼイゴが尖っているものが新鮮です。ただ、マアジは真水につけると光沢が失われる性質がありますので、白っぽくても必ずしも古くない場合もあります。つかんで張りの有無を確かめるのが良いのですが、パックされているとそうもいきませんね。次に脂の有る無いは、背中の太り具合です。サイズの大小ではなく、背中が太っているものは脂があります。店頭で試して、実際に食べてみてください。段々<目利き>になれますよ。

調理のコツ・・・
マアジは1尾が200g前後の中型ですと値段も高めになりますが、100g前後の小アジだとグッと安いですね。このサイズがねらい目です。ちょっと<下ろし方>を覚えれば、安くて美味くて早い料理のレパートリーが格段に広がります。マアジはこれから夏場にかけてが旬、是非<自家製あじのたたき>や<自家製アジの干物>に挑戦してみてください。

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2002年5月号