◆◇◆キングとクイーンの話◆◇◆

カニというと、真っ先に浮かぶ名前は何でしょう?毛がに?わたりがに?タラバガニ?ズワイガニ?これらは皆、私たちにとって特に馴染み深い<カニ>たちですね。その中でも英名でキングとクイーンの名が付くカニがいます。king crabとはタラバガニのこと、queen crabとはズワイガニのことです。

タラバガニってこんなカニです
店頭でも活きているものやボイルした丸のままのものを見かけることがありますので、皆さんもその姿はよくご存じですね。活物は暗紫色で甲羅は丸みのある五角形です。大きいものは長い脚を広げると1m以上、重さは11kgにも達します。一般的には脚だけをボイルして冷凍したものや、食べやすく笹切りにしたものが並んでいますね。

分類上は十脚目タラバガニ科に属します。十脚?どうみてもハサミが1対、脚が3対の合わせて八脚しかありません。実は第4歩脚は短くて、さい室と呼ばれる体の一部に差し込まれていて見えないのです。また、ハサミは右の方が左よりも大きいです。

タラバガニは寒海性で、日本海から北海道沿岸、オホーツク海、ベーリング海、アラスカ沿岸などにかけて、水温10度以下の海域に住んでいます。成長は遅く10年ほどで約10cmになって大人になります。寿命はオスが31年、メスが34年と推定されています。

和名のタラバガニは漢字では「鱈場蟹」と書きます。鱈場とはタラ漁をする漁場のことです。明治時代、タラ漁の船員が誤って網を沈めてしまい、苦労して網を引き上げてみると、見たこともない大きな<カニ>がたくさんかかっていたことから<タラバガニ>の名が付いたということです。

キング<王様>は実はカニではありません
英名のキングクラブが示す通り、タラバガニはその大きさ、姿、美味さからカニの王様として欧米でも人気は高いのですが、やはり外国でもcrab=カニの名が付いています。誰が見ても<カニ>に見えるのですから、それでいいと私も思いますが、分類学上はそうもいきません。タラバガニ科は実はカニ類ではなく、ヤドカリの仲間だったのです!その動かぬ証拠の一つが、先程の八脚にしか見えない<脚の数>です。

タラバガニ科のカニでない仲間には、他にもタラバガニによく似たアブラガニ(業界では通称アブラタラバと呼ばれ、一般的にタラバガニとして流通しています。)、ハナサキガニ、イバラガニなどがいます。

ズワイガニってこんなカニです
<日本海の冬の味覚>として人気の高いお馴染みズワイガニは、たくさんの地方名を持っています。北陸の越前ガニ、山陰の松葉ガニはその双璧ですね。その他にもメスだけに限った地方名にコウバコ、コガニ、セイコ、ゼンマル、アカコ、クロコ等大きさや卵の成熟度に応じた名前もたくさんあります。古くから親しまれてきた証ですね。

ズワイガニは十脚目クモガニ科に分類されます。くすんだレンガ色、おむすび形の甲羅、ハサミ1対に脚4対の合計十脚とこちらは正真正銘のカニです。一般的にオスは甲長15cm、メスは小さく8cmほどしかありませんが、オスの大きいものは脚を広げると80cmに達します。大人になるにはやはり10年近くかかるといわれます。

ズワイガニ漁解禁
ズワイガニ漁は11月6日に解禁されましたが、兵庫県浜坂の初漁の様子を漁船にカメラを持ち込んで録画されたものがテレビで放映されていました。荒れた海の中、夜通しの作業でした(その間レポーターは船酔いでほとんどダウンしていました)。翌朝水揚げのため港に戻り、休む間もなく再び漁場に戻っていきました!ウ〜ン・・・体に気を付けて頑張って下さい!

名前の由来
ところで、ズワイガニの名前の由来は定かではありません。ほとんど使われていませんが漢字では<楚蟹>という字が当てられます。<楚・すわえ>とは木の枝や幹から細長く伸びた若い小枝のことです。長い脚を小枝にたとえて<すわえがに>、これが転じて<ズワイガニ>、うん、かなりもっともらしいですね。それから、英名ではqueen crab の他にsnow crabとも呼ばれるそうです。クイーンにスノー、どちらもお洒落でいいですね。

ズワイガニの仲間と言えば、代表はベニズワイガニです。その名のごとく色鮮やかですが、肉質が水っぽく、鮮度も落ちやすいため、ズワイガニほどには評価されていません。

目利きのポイント
活物は、持ち上げると元気よく脚を動かし重量感があるもの。ボイルしたものは甲羅の色がきれいで重量感があり、関節のところが黒ずんでいないことがポイントです。

カニ/ア・ラ・カルト
生で鮮度の良いものはシャブシャブが最高!オーブンで焼くのもGood!冷凍のボイル物は自然半解凍で、加熱するなら蒸し器で。その他、サラダ・酢の物・鍋物・フライ・スープ・かにたま等々で。

●昨年の暮れは、狂牛病の影響で需要がタラバガニに集中して品薄パニック状態になりました。今年は春以降、ロシア物の密輸規制が厳しくなったことに加えて、かなりの不漁のため、昨年の暮れを上回る<品薄高値>が確実な状況です。益々高嶺の花になってきそうですね〜。ズワイガニはそれほどひどい状況ではありませんよ。

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2002年11月号