◆◇◆海の中にも桜が満開の話◆◇◆

桜えびは通年、釜揚げの冷凍品や素干しなどが出回っています。お好み焼きやかき揚げの材料としてお馴染みですね。でも今頃なら<生>が手に入ります。鮮度落ちが早いため、地域によっては<生>は食べたことがないという人が多いかも知れませんね。春と秋の季節限定、それも漁模様次第という稀少品です。透き通った桜色の美しい姿、口にしたときの歯触り、ほんのりとした甘味、思わず「美味い!」とニッコリすること請け合いです。

生態
桜えびは、甲殻類十脚目サクラエビ科に分類されます。体長はわずか4〜5cmほどの小エビです。深海性で昼間は200mほどの深さの所にいて、夜間にはエサを食べに表層20〜30mまで浮上します。そして、明け方には再び深みへ戻ります。これが桜えびの生活パターンです。寿命は短く、15ヶ月です。

体には約160個もの発光器がありますが、実際に発光している姿は確認されていませんし、なぜ発光器があるのかも分かっていません。私の当てにならない推理では、同じく今が旬のホタルイカと共通項が多いような気がします。01年3月号<春の風物詩の話>として紹介したホタルイカは実際に強い光を発しますが、これは夜間に敵を威嚇するためではなく、上昇や下降する時の明るさに溶け込むためでした。桜えびもきっと、かつてはそんな使い方をしていたのではないかと・・・???

うっかり漁師の世紀の発見!
桜えびの歴史は極めて浅く、登場したのはつい最近と言っていいほどです。それもベテラン漁師の「うっかり」のおかげというから面白いものです。今からたった?110年ほど前の明治の中頃の話です。駿河湾は由比の二人の漁師がいつものように夜間のアジ漁に沖合に出ました。漁場に着いて網を下ろそうとして、肝心な浮き樽をうっかり忘れてきたことに気付きました。戻るのも面倒とばかりに浮き樽なしに網を下ろし、深みに沈んだ網を引き上げたところ、何と大量の見たこともない小エビがぎっしり入っていた!ということです。これが世界初の発見になりました。名前はもちろん見たまんま、「桜えび」です!

地域限定
桜えびの住みかはごく限られています。日本での漁獲のほとんどは駿河湾です。他に遠州灘や相模湾、東京湾でも漁獲されますが、量的には駿河湾が圧倒的です。外国では台湾、中国に分布するくらいで、世界的にも稀少生物として知られています。英名もそのものズバリ<sakura shrimp>です! 現在でも、食用にされているのはこの「桜えび」だけだそうです。

期間限定
桜えびの漁獲量は増減の変動が大きいのが特徴です。この原因は解明されていませんが、資源保護のため春漁が3月末から6月上旬、秋漁が10月末から12月末と漁の期間を限定しています。<生>が食べられるのはこの期間だけです。

色々桜えび食べ比べヒント(#^.^#)
1)生:純生と冷凍があります。いずれも、おろし和えやレモン汁、生姜醤油、わさび醤油などお好みで。
2)釜揚げ:塩ゆでしたもの。コクと潮の香りが増して風味が豊かです。サラダやちらし寿司にもいいですよ。
3)素干し:生を天日干ししたもの。旨味が濃く香りが高い。かき揚げ、お好み焼き、焼きそばなどにほんの少し入れるだけで風味が格段に増します。
4)煮干し:釜揚げをさらに天日干ししたもの。歯ごたえがグッド。何と言っても、かき揚げがオススメ。
※生桜えびを食べるときに<ヒゲ>が気になるという人は、水をはったボールに桜えびを入れ、割り箸数本でかき回してみてください。結構ヒゲが取れます。

似て非なるエビ!?
一般に、素干しなどに加工されている赤い小エビを見かけると「ああ、桜えびか」と思ってしまいがちですが、次からは立ち止まって、原材料名の表示を確認してみてください。実は別種の<シラエビ>や<南極オキアミ>を赤く着色したものであったりします。ちなみに、この<南極オキアミ>はエビの仲間ではありません。<小エビ>と称してお好み焼きに使われているのはこれであることが多いようです。桜えびは高価ですからネェ〜。

桜えびパワー全開!
丸ごと食べる桜えびは、カルシウムやリンなどの無機質が他のエビとは比較にならないほど多く、コレステロール値を下げるEPA・DHA、タウリンなども効率よく摂取できる<超優良食品>です!

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年4月号