◆◇◆ラッキョウ好きなタコの話◆◇◆

イイダコと聞いても、「フーン」という程度でほとんど無関心という人が多いようです。ハマの魚河岸でもマイナー、Cランクの格付けです。値段も安いのですが、当地ではとんと人気がありません。「夕食の主役にはチョットね〜」と思いこんでいる方、それは食わず嫌い、いや、作らず嫌い?というものです。

可愛イイダコです(^^)
日本はもちろん世界一のタコ消費国です。欧米などでは悪魔の使いとして昔から忌み嫌われてきましたが、日本ではその逆にとても親しまれてきました。真っ赤なゆで蛸が頭に鉢巻きをしたキャラクターが何ともユーモラスで、タコのイメージアップにかなり貢献していそうです。海の中の実像とはかけ離れているのですが・・・。

さて、そんなタコの仲間の中でもイイダコはちょっと異色です。皆さんが店頭で見かける通り、小さいのです。あれは子供なのではありません。成長しても普通は20cm位まで、最大でも30cm位です。色は淡い黄褐色で頭と見える胴体は卵形です。両目の間に長四角形の紋があるのと、左右の傘膜(腕の付け根)に金色に縁取られた紋があるのがトレードマークです。

生態・・・
イイダコは八腕形目マダコ科に分類されます。お馴染みのマダコ、ミズダコ、ヤナギダコなどと一緒です。北海道から九州、中国、朝鮮に分布し、浅い海の砂泥底、砂礫底に住んでいます。アサリやバカガイ(アオヤギ)などの二枚貝とラッキョウ?が好物です。

産卵は春3〜4月頃ですが、1月頃からメスの卵巣の卵は成熟し、頭(胴体)ははち切れんばかりに膨らみます。親の体は小さいのですが卵は逆にとても大きく、卵巣にびっしり詰まっている様子が飯粒のようであることから<飯蛸(イイダコ)>と名付けられました。というわけで、卵を持ったイイダコの場合は「子持ち」ではなく、「イイ持ち」と言います。

ちなみにイイダコの卵の大きさは、6〜7mm×2.6〜2.9mmもあるため産卵数は300〜400粒程度です。一方、マダコの卵は小型で十数万個も産卵しますので、その違いが歴然としています。もちろん、卵が大きいということは産まれる子供も大きいということです。産卵後40〜55日で孵化しますが、孵化直後で1cmもあり、すでに吸盤も付いていて、いきなり底生生活を始めるのです。そして、その後も駆け足で成長し、子孫を残した後、わずか1年の一生を終えるのです。

イイダコの好物はラッキョウ!?
昔からイイダコ釣りの仕掛けと言えば、「ラッキョウ」が定説!?です。今でもラッキョウが使われているのですが、他にも白い陶器とか、白いネギ、白い疑似餌など、つまり白い適当な大きさの物であれば何でもOK(^_^;と言うことだそうで・・・。それが釣り餌と知っていれば、イイダコは大のラッキョウ嫌いになるに違いありません!

また、漁法としては、タコ壺漁も古く弥生時代から行われていたようです。イイダコ用の小型の素焼きの壺を縄でくくり、海底に沈めて数日後に引き上げるわけです。これはイイダコの狭い場所にこもるという習性を利用したものです。壺の代用として、空き缶や竹筒、二枚貝の殻などでもいいそうです。

有明海の秋の風物詩
イイダコ漁といえば昔から瀬戸内海、東京湾そして有明海が有名です。有明海のイイダコ釣りは10〜11月がピークで1月まで続きます。週末には特に観光客等で賑わうそうです。海の上から見る雲仙や多良岳の眺めながら、イイダコ釣りに興じる姿は有明海の秋の風物詩となっているそうです。

蛸足?いいえ、蛇足!です
ところで話は変わりますが、タコとかイカって切っても赤い血が出ませんよね。血がないのでしょうか?そんな?をお持ちの方に回答です。もちろんタコにもイカにも血は流れています。ところがその血は赤くないのです。人間の血が赤いのは血色素ヘモグロビンに含まれる鉄のせいです。一方、イカやタコの血色素ヘモシアニンは銅を含んでいるため青いのです。このため、人間の眼にはほとんど判別できないというわけです。

イイダコパワー全開!
タコ類は低カロリーでミネラルやビタミンのバランスも良いため、肥満や成人病予防に最適です。また血圧やコレステロール値を下げる働きをし、高血圧や動脈硬化予防に効果があるといわれているタウリンがとても豊富に含まれています。さらに、タウリンにはインシュリンの分泌を促進する作用もあり、糖尿病の予防を心がけている方には特におすすめです。

食べ方&調理のコツ
イイダコの料理用途は、煮物、鍋物、おでん、炒め物、空揚げ、フライなど色々ありますが、今回のおすすめは<地中海風イイダコのやわらか煮>です。イイダコをトマト、ニンニク、オリーブオイルでやわらかく煮込んだ一品です。スパゲティのソースにしてもいいですよ。レシピをご覧下さい。

墨袋は取るのと取らないの?
一般的には墨袋と内臓を取り除きますが、海辺の人は<イイダコは墨と内臓に価値がある>と言います。どちらも試してみてはいかがでしょう。

■メールマガジン<お魚よもやま情報>2003年10月号